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母乳育児の悩み

授乳1か月目 9つのトラブルと解決方法

おすすめの記事: 10 min.

授乳1か月目によくある授乳トラブルの解決方法に関する専門家のアドバイス

授乳は最初から上手くいくものではなく、車の運転のように練習して身につけるものです。特に最初の1か月間は難しさを感じるお母さまと赤ちゃんもいらっしゃいます。お母さまと赤ちゃんが本能的に授乳できるようになるには時間と練習が必要になります。今、授乳と向き合うことで、しっかりと母乳量を安定させ、母乳育児を長く続ける良いチャンスを得ることができます。以下は、1週目の終わりから1か月目の終わりまでにお母さまが経験する、よくある授乳トラブルを解決するヒントです。

トラブル 1: 乳房に痛みを伴うしこりがあります

授乳期の乳房にあるしこりやこぶには様々な原因があります。最も一般的なものは乳管閉塞、つまり母乳による詰まりであり、ヒリヒリとした痛みや圧痛を伴う固いしこりの原因となります。

解決方法1–3

  • 母乳を与えたり出したりするときは特に、詰まりを解消するために症状がある部分をマッサージしてください
  • 不快感を和らげるために、授乳前に温めたタオルを優しく乳房に当ててください。または、温かいお風呂に入ったりシャワーを浴びてみてください。
  • 乳腺炎につながるような母乳の蓄積を避けるため、通常どおり授乳を続けてください
  • きちんと母乳が流れているか確認するため、また乳管がふたたび正しい働きができるよう、詰まりの解消を助けるためにも、授乳後に症状がある乳房からさく乳してみてください。Medela (メデラ) のフルラインナップ さく乳器ポートフォリオでは、お母さまのニーズに合ったものを選ぶことができます。
  • 超音波治療について聞いてみましょう。乳管閉塞が再発した場合、母乳の流れを取り戻すために、この治療法をラクテーション・コンサルタントまたは母乳育児の専門家が推奨する場合があります。この治療は、理学療法士がおこないます。
  • 感染症のサイン(赤く、痛みを伴う乳房、または高熱、うずきと痛み、頭痛といったインフルエンザに似た症状)に気づいた場合、またはしこりが授乳と関係ないと思われる場合は、医療従事者にご相談ください

トラブル 2: おっぱいが赤くなり痛いです

片胸または両胸の乳房が赤くなって痛みを感じ、それが乳管閉塞ではない場合は、乳腺炎の可能性があります。乳腺炎とは、乳房細胞が炎症を起こしている状態のことです。兆候としては、赤くて熱をもつ部分が見られたり、圧痛、インフルエンザに似た症状(関節痛を伴う熱と寒さ)、38.5 °C(101.3 °F)以上の熱があることなどが挙げられます。このような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。乳腺炎はわずか数時間で悪化する場合もあるため、すぐに治療する必要があります。3

乳腺炎の主な原因:

  • 未治療の乳管閉塞
  • 傷のある乳首から乳房に侵入した細菌
  • 赤ちゃんがきちんと吸てつできていない
  • 授乳間隔が長い
  • 乳房を張った状態のままにしている
  • きつすぎて皮膚にくいこむほどのブラや衣服の着用
  • 急な卒乳
  • 過剰な母乳量

解決方法3
医療機関の受診と併せて、以下のようなセルフケアのヒントもあります。

  • パッケージの記載事項または薬剤師の指示のとおりに、アセトアミノフェンまたはイブプロフェンを服用してください(アスピリンではないので注意)。
  • 頻繁に授乳やさく乳をしてください。母乳はまだ赤ちゃんが飲んでも安全なものです。母乳を出すことで、詰まりの解消につながり、母乳がさらに溜まって痛みを感じる状況を予防します。突然やめることは症状を悪化させます。授乳後に残った母乳を出す必要がある場合があります。
  • 症状のあるおっぱいから先にあげてください。こうすることで、赤ちゃんに適切に母乳を外に出してもらうことができます。それが痛すぎる場合は、症状のない方から始めて母乳を流れさせ、反対側に替えてください。
  • 十分に休息、水分、食事をとってください。水分をたっぷり摂取し、栄養のある食べ物を食べるようにしてください。
  • 母乳を与えたり出したりする前に詰まりを解消して症状を和らげるためには、温かいお風呂やシャワーでその部分をマッサージしてください。または、温めたタオルやホットパックを押し当ててください。
  • 炎症を軽減させるために、授乳後にクールパックを使用してください。 

トラブル 3: 疲労感をとても感じます

最初の数週間は時折、授乳に疲れを感じたり授乳を過酷に感じるものです。お母さまがまだ出産からの回復期にある間も、昼も夜も数時間おきに授乳しなければならないでしょう。

解決方法

  • ご自身のケアをしてください。新生児を育てるのは、口で言うのは簡単、でもそれを実行することは難しいですね。できるだけ休息をとり、規則正しく健康的な食事をとり、たっぷりの水分を補給することが大切です。パートナー、家族、友人のサポートを受けましょう。有料のサービスを受けるのも一つのアイデアです。
  • 横になって授乳してください。こうすることで、よりリラックスすることができ、ヒリヒリする部分、傷口の縫い目、または帝王切開の傷跡への圧迫が少なくなります。
  • 授乳の回数は減らさないでください。パートナーが気遣って、お母さまの休憩中に赤ちゃんに哺乳びんでミルクをあげてくれるかもしれません。これは魅力的かもしれませんが、最初の4週間は母乳を直接与えることで母乳量を安定させることができます。安定して直接母乳を与えられるようになったら、さく乳した母乳を赤ちゃんに与えてみることができますが、それまではお母さまが授乳に集中できるよう家族や友人には他の仕事をお願いしてください。

トラブル 4: 母乳量を増やすにはどうすればよいですか?

赤ちゃんが急成長する3~4週目は特に、母乳量に関して不安になることがあります。授乳回数が増えているのは、母乳量が十分ではないのではと心配されることがあるかもしれませんが、おむつが濡れたり汚れたりする数が普段どおりであれば、以下を参照してください。授乳: 最初の1か月に起こりえること - 赤ちゃんは、安心するために以前よりも頻繁におっぱいを飲んでいる可能性が高いです。赤ちゃんは新しい視界や音に敏感です。授乳はそのような赤ちゃんに安心感を与えます。4

解決方法4,5

  • 医療従事者が赤ちゃんの体重増加や水分補給を指示しない限り、粉ミルクで満腹にさせることは避けてください。母乳量を自然に増やすには、おっぱいから直接授乳することを続けてください。母乳量は自然に増えていきます。
  • 授乳スケジュールで授乳を行わないでください。母乳量が赤ちゃんが必要とする量まで増えるまでは、赤ちゃんが欲しがるままに授乳してあげてください。
  • 直接授乳を継続することに加えて、母乳量を増やすためにさく乳器を使用してください

トラブル 5: 母乳量が多すぎます

母乳分泌過多症、すなわち母乳過多は、お母さまと赤ちゃんにとって授乳が難しくなる原因となります。お母さまがおっぱいが張って母乳の漏れや不快感に悩まされている一方で、赤ちゃんは一生懸命に吸いつこうとし、最初に流れ出た母乳でのどが詰まり始め、うまく飲むことができない可能性があります。6

解決方法

  • 射乳反射の力を弱めるために、授乳開始時に少量の母乳を捨ててください。これが母乳過多を悪化させる可能性があるため、あまり多くは出さないで、不快感を和らげるのに十分な量だけ出してください。手でさく乳するか、さく乳器( 当社のさく乳器のラインナップでお母さまのニーズに合ったものをお探しください)を使用してください。
  • タオルまたはガーゼを使用して余分に出た母乳を吸い取ってください。または、授乳時に漏れ出た分を受けるためにミルクコレクションシェル(日本未発売)をもう一方の胸にはめてください。
  • 赤ちゃんがちゃんと支えられていると感じられるようにしましょう。(安心感を与えられるように)赤ちゃんをしっかりと、頭を動かすことができる心地よい位置で抱っこしてください。最初の母乳が出ているときは赤ちゃんに話しかけ、赤ちゃんが驚いておっぱいから離れないようにしてください。
  • ラクテーション・コンサルタントまたは母乳育児の専門家に相談してください。お母さまと赤ちゃんの両方の状況を確認して、母乳量を調整する方法の提案などを行います。
  • ゆっくりと待ちましょう。母乳分泌に関するトラブルは、通常数週間で改善していきます。

トラブル 6: おっぱいの大きさが左右で違います

赤ちゃんが片胸ばかり吸いつきたがったり、片胸の母乳量が多かったりすると、これにより両胸の大きさや形に違いがでることがあります。これはとても一般的なことであり、授乳時に何かトラブルを起こすことはありません。お母さまや赤ちゃんに支障がなければ対応は必要ありませんが、気になる場合は以下を試してみることもできます。

解決方法

  • 通常赤ちゃんは最初に勢いよく吸いつくので、授乳のたびにあまり使わない方のおっぱいを先にあげてください
  • 効率性が低い方の胸の分泌量増加を助けるために、さく乳器を使用してください
  • 張っているおっぱいを気にかけてください。また、乳管閉塞や乳腺炎にならないためには、大きい方から授乳するようにする必要があります。
  • 医療機関を受診してください。まれに耳の感染症により赤ちゃんが片側からしか飲まない場合があります。その場合、特定の姿勢が不快になるため、縦抱きが役に立ちます。他にも、乳房が感染症にかかっていると、母乳の味が変わり、赤ちゃんが嫌がる場合があります。

トラブル 7: 乳首に水ぶくれがあります

赤ちゃんが頻繁に飲みたがると、乳房、乳頭または乳輪が擦れて痛くなったり、血豆ができたりします。7

解決方法

  • 赤ちゃんのくわえ方をチェックしてもらうため、ラクテーション・コンサルタントか母乳育児の専門家に相談してみてください。くわえ方が浅い場合、乳頭や乳輪の水疱を引き起こす可能性があります。
  • 授乳中の痛みを和らげるために、赤ちゃんに授乳する1時間前までにアセトアミノフェンまたはイブプロフェンを服用してください(アスピリンではないので注意)。
  • 痛みを感じる部分を押さないよう、別の授乳姿勢を試してください
  • 痛みを和らげるために、天然素材でできているラノリンクリームの使用をおすすめします。   
  • 衣服が水疱を刺激しないように、また通気をよくし回復を助けるために、ブレストシェルの着用をおすすめします。また、違和感や不快感を抑えるため、クーリング作用のあるハイドロジェルパッドをお試しください。
  • さく乳してみましょう。さく乳器の使用は、水疱を悪化させずに母乳を与える代替手段になる場合があります。さく乳口のトンネル内で乳首がこすれないように、また乳頭の動きが制限されることのないように、きちんと正しいサイズのさく乳口を使用してください。
  • 感染症になるおそれがありますので、水疱をつぶさないでください
  • 症状が改善せず痛みがあるようでしたら、医療機関を受診してください

トラブル 8: 痛みを感じる白い斑点が乳首にあります

乳管の出口が濃い母乳で詰まるか、皮膚の薄膜がその上にかぶさると、これが小さな白または黄色の斑点を乳頭の先端に作ります。このような乳管閉塞( 乳疱とも呼ばれる)により、特に授乳時やさく乳時に、局所的な痛みを伴うお母さまもいらっしゃいます。あまり気にならないお母さまもいらっしゃいます。白い乳疱は数日または数週間続くことがあり、最終的に皮膚が破れて固まった母乳が排出されるまで続きます。 8

解決方法

  • 乳疱のこすれについては上記のアドバイスに従ってください
  • 母乳の詰まりが突き出ている場合は、詰まりをほぐしてください(非常に清潔な指先で優しく引っ張り出してください)。
  • もう一度乳管が正常に働くようにするため、授乳またはさく乳を続けてください。授乳中に詰まりがとれたとしても、赤ちゃんに影響はありません。
  • 詰まっている乳管を開きやすくするために、授乳やさく乳の直前に水疱に温かくて湿ったガーゼを当ててください。また、清潔な湿ったガーゼでよくこすってみてください。
  • 授乳前に手でさく乳して、固くなった母乳の「すじ」を押し出してみてください。効果がない場合は、通常どおり授乳またはさく乳してください。一日に数回繰り返してください。
  • オリーブオイルにコットンウールの玉をひたして、乳疱のある乳頭に接するブラの部分に置いてください。皮膚を柔らかくするのに役立ちます。
  • 症状が続くようでしたら、医療機関を受診してください。医療従事者、ラクテーション・コンサルタント、母乳育児の専門家は、消毒した針を使って詰まりを取り除くこともあります。この処置は、乳疱が最も突出している授乳後におこないます。

トラブル 9: 授乳時に乳首が傷つきます

授乳初期は乳頭に痛みを感じたり、ヒリヒリすることがあります。通常これは数日で落ち着きます。専門家に赤ちゃんの飲み方を見てもらっても痛みが続く場合、または授乳のたびに毎回乳首が痛む場合は医師に相談してみてください。2,7

授乳中または授乳後に、片胸または両胸の乳房に次のような症状やサインがある場合は、細菌による感染症またはカンジダ症の可能性があります。

  • 乳頭が少しまたはひどく、ほてる、かゆい、またはヒリヒリ痛い
  • 乳房に触れる衣服を着ることで乳首の痛みが悪化した
  • 赤ちゃんのくわえ方を調整したにも関わらず乳首の痛みが続く  
  • 乳首を触ると痛い
  • 刺すような痛み、ずきずきする痛み、焼けるような痛み、または強くうずく痛み
  • 乳房の痛みが授乳中ずっと、さらには授乳後最大1時間後も続く
  • 乳首が明るいピンク色
  • 乳輪の色や質感の変化(明るいピンク色または暗い色になる、乾燥または剥けやすくなる)
  • 乳輪または乳房に白い発疹がある

また、赤ちゃんに次のような症状やサインがないか注意してください。

  • 舌に分厚くて白い斑点または膜がある
  • 頬にこすっても落ちない白い斑点がある
  • お尻におむつかぶれ用クリームでは消えない斑点のある真っ赤な発疹がある

解決方法7

  • 医療機関を受診してください。医療従事者はおそらく乳頭からのサンプル採取を希望し、感染の有無を調べ、感染している場合は感染症の種類を調べます。細菌感染症の治療法はカンジダ症とは異なりますので、できるだけ早く正しい治療を受けることが最適です。お母さまの湿疹、乾癬、血管れん縮(血管が狭くなる)や、赤ちゃんの弱い吸てつまたは舌小帯短縮症など、同様の乳首の痛みを引き起こす他の問題もありますので、医療機関の診断を受けることが大切です。
  • 衛生状態を良くしてください。授乳をするとき、手当てをするとき、またおむつを替えるときも、その前後に手を洗ってください。母乳パッドを頻繁に取り替え、ブラ、トップス、タオルを熱いお湯で洗濯し、さく乳口を徹底して洗浄し、また哺乳びんの乳首など赤ちゃんの口に触れるものもすべて洗浄してください。
  • 病原菌は暖かく湿った場所で繁殖するため、授乳後は乳頭を乾かすようにしてください
  • 数日たっても改善が見られない場合は、医療従事者に再度ご相談ください。トラブルを放置して悪化させないでください。
参考文献

1 Academy of Breastfeeding Medicine Protocol Committee. ABM clinical protocol# 20: Engorgement. Breastfeed Med. 2009;4(2):111-113.

2 Jacobs A et al. S3-guidelines for the treatment of inflammatory breast disease during the lactation period. Geburtshilfe und Frauenheilkunde. 2013;73(12):1202-1208.

3 Amir LH. Academy of Breastfeeding Medicine Protocol Committee. ABM clinical protocol# 4: Mastitis, revised March 2014. Breastfeed Med. 2014;9(5):239-243.

4 Kent JC et al. Principles for maintaining or increasing breast milk production. J Obstet, Gynecol, & Neonatal Nurs. 2012;41(1):114-121.

5 Amir L. Breastfeeding managing ‘supply’ difficulties. Aust fam physician. 2006;35(9):686.

6 Trimeloni L, Spencer J. Diagnosis and management of breast milk oversupply. Journal Am Board Fam Med. 2016;29(1):139-142.

7 Berens P et al. Academy of Breastfeeding Medicine. ABM Clinical Protocol# 26: Persistent pain with breastfeeding. Breastfeed Med. 2016;11(2):46-53.

8 Australian Breastfeeding Association [Internet] White spot nipple; March 2015 [Accessed 08.02.2018].

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